ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風
発売元 CAPCOM
発売日 2002年7月23日
ジャンル 黄金体験アドベンチャー


『紹介』か、悪くない

 

 今更説明が要るのかどうか分かりませんが、週間少年ジャンプで連載している人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の『第5部』をPS2というハードで3Dアクションゲーム化したのがこの『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風』(以下、本作の表記)です。

 前作(と言って良いモノか分かりませんが)であるAC版ジョジョのPS移植版に存在した『スーパーストーリーモード』が本作の主軸であり、つまり『原作のストーリーに準えて話を進めていく』と云うのがゲーム内容になります。

 そして、本作のウリは『ジョジョの世界を完全3D化』にある通り、アーティストゥーンと云うセル画調(つまり、トゥーンシューティング)のポリゴンキャラで3D空間を暴れ回れる事と、ジョジョのあの名言の数々を声として聞けるところにあります。

 実際CMで『アリアリアリアリ…アリーヴェ・デルチ!』や『ボラボラボラボラボラ…ボラーレ・ヴィーア!』の掛け声を聴いて嬉しがった人も多かったんじゃないでしょうか。私もCAPCOMの公式HPで、プロシュート兄貴の『ぶっ殺すと心の中で思ったのなら!その時既に行動は終わっているんだ!』を聴いて大はしゃぎしていたクチです。

 まァそんなワケで、このゲームは『ジョジョファンのために』『ジョジョファンをターゲットに』作られたゲーム、というワケであります。

 

『想い』を『感じる』と書いて『感想』!…フフ、よくぞ言った物だ

 

 そして私も説明の余地無くジョジョファンの一人だったりするので、本作は発売前から凄い楽しみにしてました。

 特にCAPCOMは前作に当たるCPS-3版ジョジョ(格ゲー)で余すとこ無くジョジョへの熱愛を見せていましたから、問答無用で期待も高まるってもんです。前回ドット絵デモでアレだけ楽しませたのに、本作では完全3D化ですよ?もうあんなポーズやあんなセリフを魅せてくれるかと思ったら身悶えようものです、ゴゴゴゴゴ。

 さて、感想に移りたいと思うんですが、このテキストはジョジョの5部を読み終えているのを前提に書いているので、これから原作を読もうと思ってる人はこの先は読まない方が良い、と云う事を予め断っておきたいと思います。

 それを承諾した上でこれより下をお読み下さい。

 

 

 では、結論から。

 『全体的に中途半端ッス』。

 これが『私が』本作を著すのに一番フィットする言葉じゃないかな、と思います。或いは、『全体的に今一ッス』でも可ですが。

 シナリオに関しては、原作を読んでいる人なら先ず間違いなく不満が出るだろう『削り』を行っているし、原作を知らない人は何が起きてるのか把握しづらい『急展開』の連続です。

 アクションの方は、面白いのですが基本的にごり押しだけでどうにかなる大雑把な調整が気になりますし、特定箇所をスタンドで殴る事に依って発生するシークレットファクターもそれなりに面白いのも多いのですが…、肝心のステージ毎の仕掛け(マップそのもののアクションや、クリア条件等)も結構単調な感じなのです。詰まらなくは無いんですよ、『面白いのが多い』と書いた通り、面白いとは思うのです。ただ、単調故に飽きが早いと思います。

 デモが主体と言うわけでも無く、かといって純粋にアクションが楽しめるわけでも無い。

 やり込ませるためにあるっぽいジョジョポイントも、溜めてもBGMやSEが聞けたり、ステージを自由に歩けるだけだったりしますし。そんなん他のゲームじゃデフォルトちゃうんかい。

 『何はともあれ中途半端』、『何をするにも今一』、そんな思いが付き纏います。

 

 さて、ではそんな不満点や感想なんかを細かく。

 

 先ず、第一にデモに関して。

 ジョジョの世界を完全3D化と自ら称している様に、実際にキャラや背景はポリゴンで作られ、その中で幕間劇に興じるデモは一見の価値があります(背景のオブジェクトの数が圧倒的に少ないとしても)。

 但し、その『完全3D化』のデモと言うのは、実際はゲーム中のデモの半分にもなりません。その殆どは、一度3Dとしてレンダリングされた画面を、デジタル漫画の様に表示する形、即ち小さな一枚絵を画面に表示させ、吹き出しから出る声を聴かせるだけの、『完全3D化』には程遠いものばかりなのです。

 勿論大切なデモ(ドッピオが柱を抜けてディアボロに変化するシーンとか、ジョルノが矢をゴールド・Eに指すシーンとか)は3Dなのですが、涙目のルカを殺るシーンや、ペリーコロさんがトリッシュを連れてくるシーンなんかは、そのデジタル漫画を見せられるだけです。

 ここで重要なのは、上記の様な『幾ら何でもそんなシーンは省いて良いだろう』というシーンだけで無く、ジョルノがポルポに出会うエピソードや、プロシュート兄貴とペッシが電車に来るシーン、更にはブチャラティが地下納骨堂から逃げるシーンや、チャリオッツ・レクイエムの矢をディアボロが追う様な見せ場である所までも小さな一枚絵で誤魔化されてしまっているという点なのです(加えると、チャリオッツ・レクイエムを追う時の『誰の精神にディアボロが付いているのか』というあの駆け引きエピソードは削られていました)。

 最初、複数のキャラをリアルタイムレンダリングする処理が大変だから省いているのか、と自分に言い聞かせようとしていたのですが、ブチャラティがボスを裏切った事を報告するシーンでは彼のチームが全員映っていても問題無いですし、チャリオッツ・レクイエム暴走後、ナランチャ殺害のシーンでも全員がキチンと表示されてデモが流されています。

 『これは一体どう云う事なのか』という事なのです、私が重要視しているのは。何故3Dでデモを流す部分と、デジタル漫画で済ませる部分のデモを用意したのか。それが重要なのです。

 時間が無かったのか、容量の問題か、それとも単純に愛が足りなかったのか、或いはユーザーを馬鹿にしてるのか(他の部分を見る限りは有り得ないと思いますが)、こればかりは永遠に明らかになる事が無いのが残念です。

 

 そして、デモにも関係する次の問題点。

 『幾ら何でもエピソードを端折り過ぎです、このハツカネズミども!』

 前作PS版のスーパーストーリーモードでも、再現に無理の有る話は端折って物語を進めていましたが、それでもエピソードそのものを端折る真似はしませんでした。

 例えばvsラバーソールは、チンピラが財布を盗<ぎ>る話や承太郎を突き落とそうとする話を飛ばし、承太郎がラバーソールを怪しむシーンから入りましたし、vsミドラーも潜水艦の話は消えましたが、コーヒーカップのイベントから入ってキチンと話を進めています。

 ところが本作は、話を削るわけでは無く『エピソード』を―――つまりは『敵スタンド使いそのもの』を削ってしまってます。

 これは酷過ぎます。

 康一君を出さないのは4部がメディア化されてない事も有りますから仕様が無い事と思いますが、ズッケェロ(ソフト・マシーン)&サーレー(クラフト・ワーク)を消すのはどういう事ですか?『ポルポ亡き後、自動的に遺産が手に入る』って、剰りにも面白みの無い展開です。

 何よりズッケェロの拷問(眼鏡と釣り糸)を見れないのは、時を止めないDIO様と戦う様な物<違う

 サーレー戦だって、ポリゴン化したら面白そうなのに。カプリ島の湾岸を爆走するトラックの上での攻防。サーレーを落とすと、クラフト・ワークで石階段を作りながら画面奥で湾岸コースをショートカットをする姿が見えたりして。後のギアッチョ戦の練習な感じで楽しめそうじゃないですか。

 他に消えたキャラは、メローネ(ベイビィ・フェイス)、スクアーロ(クラッシュ)、ティッツァーノ(トーキング・ヘッド)、スコリッピ(ローリング・ストーン(ズ))です。

 此奴ら、どいつもこいつも面白エピソード持ってるじゃあないですか。今更『ディ・モールト』に『凄く』なんて訳をつけないと理解出来ない様なジョジョファンは居ない位有名なのに。『水着の下はビキニだ!俺の下はスタンド!だ』なんて、ナランチャ伝説の一つなのに!<?

 まァ、スコリッピが削られるのは何となく予想していたんですけどね。本当に削られるとショックでした。3Dなマンションの中で、ブチャラティが石に捕まらない様にミスタで援護するステージ。面白そうなのになあ。

 

 では『出せば良いか』って言われたらそうじゃないって言うんですよ、このアルマジロ!

 リゾット・ネエロ。原作ではドッピオと戦い、ボスを追い詰めた暗殺チームのリーダーです(尤も、彼の場合はボスを追い詰めた事より、ドッピオの電話ネタを世に送り出すきっかけを作ったのが一番の功績ですが)。

 そのリゾットが、ゲームでは見付かった時には既に死体

 剰りと言えば剰りの扱いです。ぶっ殺すと心の中で思った時には既に行動は終わっているのですか?

 ドッピオを使ってリゾットを倒すステージを用意しろとは言いませんが(言いたいんですが)、せめてドッピオとリゾットのやり取りくらいはデモにして頂きませんと。煙草を手に取って『最近の電話は小さいなあ』とかドッピオに言わせませんと!この辺愛が無さ過ぎです。前作では『ホル・ホースvsDIO』みたいなどうでもいい話まで挿れてたのになあ。

 

 因みに、先の削られていた面々は、ジョジョポイントという物を稼ぐ事に依って『ストーリードラマ』という所謂CDドラマの様な物で再現されてるんですが、だから『完全3D化』はどうしたんだ、っつー話です。

 

 

 では、アクション部分はどうか、という事なのですが。

 これに関しては、個人個人でかなり感じ方が変わるかと思いますが、まァ、私は良いんじゃないかと思いました。

 確かに格闘ACTの出来損ないって感じもしますし、安易過ぎる半永久コンボが有りまくるのも問題だと思うんですが、それなりに操作レスポンスも良く、その辺は流石は大手メーカーの品だと云う感じはします。

 問題が有るとすれば、スタンドオフ時の敵に対するターゲッティングが結構厳しく、接近戦でもあらぬ方向に攻撃してしまう事が結構あるという事辺りでしょうか。スタンドオン時も常に敵をターゲッティングしてくれるのは良いのですが、お陰でvsチャリオッツ・レクイエムの様な敵とスタンドが別行動してる相手を殴りたい時、目の前のスタンドでは無く遠くの本体を殴ろうとして大変な目に合わされる事が起きてしまうのはどうかと思いました。

 難易度に関しては、前述の通り凄まじく簡単な半永久コンボが多いので(具体的には、□ボタン連打→歩いて→□ボタン連打…とか)大して難しくないと言うか、一部除いて馴れれば簡単と言えます。

 除かれた一部に関しては、難しいというか面倒くさい、或いはイライラするうざったいステージが有るという事で、これもステージそのものは大して難しいわけではありません。やはり馴れれば大して苦では無いステージだけです。

 アナザーストーリーモード(注1)と言う、原作とは違うキャラを使って敵スタンド使いを倒すモードに関してのみ、組み合わせ次第では滅茶苦茶厳しくなりますが(例:ポルナレフvsノトーリアスB・I・G)、コレ等は避けても良いわけですしね。

注1…要するに単なるフリーバトルで、特にデモなどがあるわけではありません。
ジョジョポイントを稼いだり、やり込むためだけに有るモードですが、
その真髄はキャラのセリフを聞く事(後述)に有ると思います。

 

 それでは、最後に肝心の『ジョジョ』らしさや『再現性』に関して。

 これも人に依って思う処が色々でしょうが、私は『ベネ(良し)!』と思いましたとも。

 例えば『ゴゴゴゴゴゴゴ…』の擬音の表現の仕方や、キャラのポーズやセリフ廻し、スタンド特性なんかも結構良かったんじゃあ無いでしょうか。

 特にキャラのセリフに関してはデモの中での会話の再現性よりも、むしろ前述のアナザーストーリーモードの中での雑談(?)の方が面白いです。これはスーパーストーリーではヒントのメッセージが出る部分に、各キャラの呟きやセリフが入ると云う物なんですが、それが細かい部分で原作のセリフを再現してて原作を知っていれば知っている程楽しめます。

 ブチャラティの『ブルっちまう特技だろ…?』や『保ってくれこの身体…後ホンのチョッピリで良いんだ』、ミスタの『パンツでも下ろされて見られたのか?』『な…何で死なねぇんだ?』、ナランチャの『こいつ名前占いで大地獄行きだぜー!』『えー?何ですかー?(老)』、プロシュート兄貴の『もしかしてツイて無いのは俺の方か…?』や、ディアボロの『お前の命はここでめだたく終了というワケだ』に『この便器に吐き出されたタンカスどもがー!!』等々。

 聞いてて、『あー、こんなセリフ言ってたなあ』『此処で言うと合うなあ』ってセリフのチョイスがとても巧いです。タマにギアッチョ『こいつ…押し切る気だ…ガムシャラに!!』→ポルナレフ『俺っていつもそうだ…失って初めて気付くんだ』とか、どう考えても成立しない会話があったりするんですが、それはそれで面白いので○。

 

 スタンド特性も(一部、原作や難易度を剰り考えていない節はありますが(注2))ゲームとしての再現性は決行面白く出来ていて、開閉するジッパーで高速移動出来るブチャラティや、鏡の中で左右のみ逆になるイルーゾォ、身体をバラバラにして襲ってくるチョコラータに、背後からじゃないとダメージを喰らわないギアッチョなど、なかなかいい感じです。

注2…地面を泳ぐ、っていうかワープしてるとしか思えない漁村でのセッコや
攻撃の意思を見せなくても追っかけてまでブン殴ってくるCレクイエムのスタンド等。
それと、ディアボロが時を飛ばす時に『エピタフ!』と叫ぶのは違う様に思うのですが。

 ディアボロも血を飛ばして視界(画面の2/3)を潰すあのせこいワザが再現されていたり、本当に細かい部分で頑張っている様に思えます。ただキング・クリムゾンの時を飛ばしてる最中ってのが少し違う気もしましたが。

 少なくとも、納骨堂の『どういう能力か理解出来ない』キング・クリムゾンの再現に関しては、画面がネガポジ反転した直後、キャラが勝手に数フレーム先の動きをしていて、背後からキング・クリムゾンが攻撃してくる、っていう感じにした方がブチャラティよろしく『???』ってなったと思います(その場合、勝ち目が無いと思いますが)。

 後に能力が判明した後、ゲームでの『飛ばされた時の中』は視界がネガポジ反転して、ディアボロ以外の動きがスローになって制御出来ない、という演出になっていますが、これも少々の違和感。まァ、これは受け取り側の食い違いなんでしょうけど。せめて、原作の様に対象以外の物体が闇に削れていく演出を入れて欲しかったです(ついでに言うと、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムのみ飛ばされた時の中で動けましたが、別にアレはそういう能力じゃないと思うのですが)。

 ただ、ディアボロ最終戦の『帝王はこのディアボロだ!依然変わりなく!!』の叫びと共に始まる演出は好きでした。そして飛ばした時の中を突っ走ってくるディアボロ!格好良いじゃないですか、原作じゃあ只のせこい小者でしたが。

 

 と、話が演出の方に逸れたのでこのまま演出の話題に。

 これは前作をやっている方だと分かって頂けると思いますが、なかなか『ジョジョっぽく格好良い』です。

 先の『ゴゴゴゴゴ…』だけで無く、スタンド発現時の掛け声や決め技をぶち込んだ時のセリフに『ドッゴォーン!』等の擬音の表示、再起不能と書いてリタイアのルビ振り等。随所にジョジョらしさが散りばめられていていい感じです。フーゴなんかを使って、『この…ド低脳が!!』『ドッゴォーン!!!』『再起不能』と流れる様に進むと『あー、ジョジョやってるわー』とつくづく思います。

 また細かいところではスーパーストーリーモードの中で、デモ曲が一部前作のデモ曲アレンジだったり、ポルナレフvsディアボロ戦で前作ポルナレフステージのBGMがアレンジされて流されたりと、前作を遊んでいるユーザーには嬉しい配慮があったりします。

 この辺に関してはベタ惚れなだけに、肝心な部分で抜けていたりする本作が、本当に『口惜しくて』仕方有りません。何で細かくジョジョ愛を感じさせてるのに、最終的に今一感が漂っているんでしょう。後で『完全版』でも出すんでしょうか(CAPCOMなら或いは)。

 

 そんなワケで、決行褒める点も多いけど、何故か今一に思ってしまう結果も付きまとう、っていうのが本作の感想です。

 イヤ、ホントにこれは後で『完全版』でも出すんじゃないかと期待(邪推)しているんですが、どうなんでしょうねえ。もし出すようなら絶対に買うと思うのですが。

 取り敢えず、本作に関しては『面白いですけど定価で買うのはお勧めしないかな』って所です。ただ『ジョジョ好きなら持っていて損は無い』と言う事を付け加えておきます。


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